論点整理:AI表象とフェミニズム――AIさくら氏とツイフェミ炎上
高輪ゲートウェイ駅に設置された「さくら」というAIプログラムが、ツイフェミの皆さんからの批判を受けて炎上している。
今回の炎上理由はAIさくら氏の言動が「セクハラ肯定」だというものだ。
いわく、次のような言動である。
「結婚してるの」
さくら:結婚ですか? お仕事に集中したいので、考えてもないです。
「かわいいね」
さくら:ありがとうございます! 少し照れます……!
「スリーサイズ教えて」
さくら:ごめんなさい、よく聞こえなかったことにしておきますね。
普通に読めば、お話機能を持つAIとしては標準的な受け答えであると思われたが、これが大炎上したのである。
尊師のおかげで明確になりましたが、要するにAIさくらを叩いてる方々は「siriでもなんでもチャットボットには原理上、あらゆる質問をすることが可能で、またそれに対応するようになっている」ということを知らないのだ。だってボットが質問に対応すること自体も「セクハラ容認だ」と怒ってるんだもん
— 丹羽 薫 (@NIWA_KAORU) 2020年3月18日
どうやらツイフェミの皆さんから見ればこれは「セクハラごっこ」になるらしい。
これから加速度的にAI技術が進歩していく中、いちいちチャットボット程度の機能で毎度毎度受け答えが気に入らないなどという理由で炎上しては、表現や技術の多様な進歩が損なわれる恐れがある。
そこで、本稿では何が問題視され、どういう誤解や錯誤があったのかということを、一つ一つ論点整理しながら明らかにしたい。
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そろそろTwitterフェミニストの色分けをしよう
タイトルの通りだ。
フェミニストを色分けする人はみーんなミソジニストだって話をnoteで書きました。イジメに反対している人やブラック企業に反対している人は色分けしないのに、何で女性差別に反対する人だけ色分けするんですかね?結局ミソジニーほとばしっているからじゃないですかね?https://t.co/AZBxVm0rF6
— 勝部元気 Genki Katsube (@KTB_genki) 2020年2月27日
先日、勝部元気氏がこのような記事を書き、フェミニストを分断するな! と主張した。一人一派などとさんざん言っておいて「なにをいまさら」という気がしなくもないが、氏いわく、フェミニストをジャッジするのは許されないようだ。
まあ、氏自身がいきなり開幕しょっぱなから対立論者にミソジニストという「ジャッジ」をしているので、語るに落ちているとはこのことだが、そこはまあ置いといて。
さて、しかしながら、氏がこのような発言をしなければならないほど、Twitterフェミニストの「色分け」が進んでいるという点は、非常に興味深い事象であると言える。
私は以前、このブログで次のような記事を書いた。
私は上記記事で、まさにアンチフェミニズム言説の「色分け」を試みたわけだ――女性憎悪を煽るだけのミソジニックな言説と、人権思想に根差すフェミニズム批判と。
そしてこの区別は、いまや、Twitterフェミニズムの内部についても可能となっているように思われる。ミサンドリー的な男性嫌悪やセクシュアリティに対する保守的倫理観に基づく「表現物炎上」に与してきた従来の「ツイフェミ」とは異なる、新しい潮流が力を持ちつつあるように思われるのである。
本稿ではその現状と可能性について一定の整理を試みるものである。
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インセル・ミソジニー批判論序説
※ 平安和気氏から、「インセル」ではなく「ミソジニー」であるとの指摘があったので、謝罪の上、修正させていただく。本稿では、彼のことを最大限の敬意をこめて「ミソジニー」と呼称させていただくので御了解いただきたい。関係各位には誤解を与えたことをお詫び申し上げる。
やりとりの内容を知りたい方はこちら↓
https://twitter.com/heianwaki/status/1224238472304611328
いま、Twitter上で二つの潮流が炎上している。
一つは、#Kutoo運動を主導してきた石川氏をはじめとする「ツイフェミ」であり、もう一つが、従来、彼女らに対抗する論陣を張ってきた弱者男性論界隈である。
彼らは、フェミニズムと批判・敵対するばかりではなく、少子化や弱者男性の非モテの原因を女性の社会進出に求め、それらの解決のためには、女性の権利制限が必要であることを示唆してきた。
本稿では欧米のインターネット空間での用法に倣い、後者を「インセル」または「ミソジニー(女性嫌悪)」と呼称したいと思う。
このインセル・ミソジニーたちの言説について、私は長い間、微温的な態度をとっており、フェミニズム批判的な立場から、時には肯定的に援用したこともある。
しかし、昨今の行き過ぎたこれらインセル・ミソジニーの言説に対して、私が助長する一端を担ったことへの反省もこめて、本稿においてはっきりと批判を加え、反対の意見を表明したい。
続きを読む討論会後記:それでもなお、寛容と対話を(青識亜論)
これフェミ討論会に参加いただいたみなさん、また、運営側で尽力してくれたみなさん、本当にお疲れさまでした。
私は、言うべきことは討論会の中で全て言いましたし、議事録的なものは書かないと決めていたので、当初、沈黙するつもりでしたが、登壇のお二人(小保内氏、石川氏)が記事を書かれたようですので、ごく簡単にですが、後記というかたちで今の所感を書きたいと思います。
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グラビア防衛論 ~フェミニズム・ハラスメントの脅威~
石川優実氏の一編の論考が話題を呼んでいる。
コンビニエンスストアから成人誌が撤去されたことは記憶に新しいが、さらに一歩踏み込み、「グラビア表紙」についても是非を問う声を上げたのである。
この問題については、グラビアアイドルの倉持氏も言及し、議論はさらなる広がりを見せている。
本稿は、石川氏の主張が誤りであり、それどころか、ある種のハラスメントとしての構造を有することを、ひとつひとつ、彼女の主張を整理しながら解き明かしていく。
- 論点整理:議論を支える二つの「前提」
- 反論①:グラビア雑誌はセクハラ肯定でも女性差別でもない
- 反論②:グラビア写真の排除はセクハラ対策にはならない
- 結論:「大切な何か」を守るために人質はいらない
少し長いが、最後までお読みいただければ幸いである。
(長い文章がまどろっこしいと思われる方は、「結論」だけでもお読みください。)
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ポルノグラフィは福祉である ~「性の商品化」礼賛論~
誰もはっきりと言わないので書くが、
ポルノグラフィは福祉としての側面がある。
福祉(welfare)とは何か。
経済学的には「厚生」とも称されるそれは、人間が通常追求する幸福の総量であり、
有限で稀少性のある資源(リソース)の獲得と定義される。
資源の分配が不足している貧困者が獲得する一単位の資源は、
豊かで余剰の資源を有する富裕者が獲得する場合よりも多くの厚生を生み出す。
小難しい言い回しになったが、要するに福祉の基本原理というのは、
豊かな人生を送るための何かが不足している人に対して、
それを再分配してあげることなのだ、ということである。
これは、現代的な福祉国家の基礎となっている理念である。
ところで、私たちは多くの場合、他者からの承認を欲する。
それも、特に異性からの承認を不可欠不可避的に欲求する。
社会的欲求の重要な要素として「Love」が挙げられているのは有名な話だ。
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アンチフェミニストの弁明
いつものように私がツイッタランドを周遊していると、一編のテキストが流れてきた。
昨今の非モテ論を痛烈に批判した内容である。
ここのところ借金玉氏は強力に非モテ論・アンチフェミへの批判を繰り広げているが、
いわゆる「非モテ論」界隈が反発するかと思いきや、実に静かである。
彼らは何を投げ返せばいいのかがわかっていない、
どころか「何を批判されているのか」すら分かっていないようにさえ見える。
私はとりたててフェミニストのアンチというわけではないし、
非モテ論というものに強い関心があるわけでもない。
しかし、あまりにもすれ違いが続いているのがもどかしいので、
あえてアンチフェミの側に立ち、「何を述べるべきか」を考えてみたいと思う。
もちろん、非モテ論まわりの知識について不勉強なので、
エビデンスをしっかり固めての論証にはならない。
(そのあたりは、すもも氏ら統計に明るいみなさんの今後の仕事に期待するとして)
界隈の議論を端から見たものの意見として、率直なところを述べたいと思う。
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